放送局裏話

ラジオ業界解説|デジタルラジオ談義(1)

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放送局の現場的に言うと「聞いてねーぞ、こんな話」という記事が、またもや新聞に載った。
CD並み音質のデジタルラジオ、来年登場 総務省案 [2005.05.10]

CD並みの音質で、画像も見られるデジタルラジオ放送の本格展開に向けた総務省の報告書案が9日、
明らかになった。全国放送を行う新会社とNHKが06年から東京、大阪で放送を先行開始し、11年に
全国に広げることとし、放送設備を持つ新会社が既存のラジオ局などから番組供給を受け、音楽、
スポーツなどの専門チャンネルを複数展開する形をとる(朝日新聞)。

この記事によると、福岡では2008年からスタートと記載されていた。
なんちやー?!?!(小倉弁) 思わず怒り爆発。そげな話は、肝心の現場の僕らには、
いっちょん何も聞かされとらんばい。どげんすっとな?

まぁ各社の事情を言えば。
2011年の地上波デジタルテレビの更新終了後に、よっこらしょっとデジタルラジオの話が進む
予定だったので、まともに対策を講じてなかったわけですよ。

しかもネットに広告宣伝費を抜かれた、ジリ貧のラジオ業界に、新しい媒体と新しいコンテンツを
開発・開拓するような余裕なんざないわけでして。
それがいきなし、5年も計画が前倒しになるという話が湧いて出てくると、さてどげんするね?
っちゅう話になる。

以前、在福岡のFM単営局の各社1名ずつと飲んだときに、異口同音に言っていたのは
「AMラジオ局がデジタルラジオに参入してきたらFMは太刀打ちできない」という台詞。
「理論上」は全くもってそのとおり。恐らく現在のFMを凌駕できるだけの可能性やポテンシャルは
デジタルラジオの技術の中に十分潜んでいると思います。

音質は従来のFM以上となり、データ送信を波を利用して無料で行え、肝心のデジタルラジオ端末は
どうせ携帯電話やカーナビなんかにひっつくので、それ本体を顧客に買わせる必要もなく、
何よりもイイのはアナログAM放送が廃止にならないわけですから、結果的にAMラジオリスナーの
全体総数であるSIU(セットインユース)を、大幅に伸ばすことができるのです。「理論上」は。
しかしながら。ですよ。

前述のとおり、そげな財源的な余裕がなかですたい。

しかも人的な余裕もなかですたい。

デジタルラジオに関する技術講習どころか、そもそものデータ送受信技術や音声のデータ化、
さらにはITやIPとの連動性やコストパフォーマンス、商業的な可能性の研究などなど、
本来ならば2011年までにプロジェクトを組んでせないかんことを、なーんもしとらんとです。
そげなこつで、5年前倒しの計画を実施するなんて、ますます放送局をつぶしたいのではないか?と
総務省を疑ってかかってしまう。まぁ計画性のなさは放送局も総務省も、どっちもどっちと
僕は思うのですけどね。

とにかく。
このブログで紹介しているような、ポッドキャスティングの技術や、一連のネットラジオの情報。
さらにはMP3の技術などについて、ローカルラジオ局はほとんど何も勉強していません。
まさに衰退する直前の媒体にいるのではなかろーか?ラジオって。ローカルラジオって。。。_| ̄|○
だんだんマジで怖くなってきた。。。。

ちなみに。
先日、こんな言葉を習いました。
「直径6mmの錐(きり)を買いに来るお客さんは、6mmの錐が欲しいのではなく、6mmの穴が欲しい」
のです。と。
つまり。顧客のニーズを見間違う産業はいつか衰退する。と。
かつてのアメリカの鉄道王は、自分たちを鉄道業と思っていた。
で、アメリカ国内でモータリゼーションが発展し、トラックが主流になってきた。
結果、鉄道王は世から消えていった。。。。
敗因は、鉄道王が自らを「運輸業」と見なかったから。
僕らは放送局ではなく、エンタテイメント産業であり、コンテンツ制作・配信者であるわけで。
許認可をもらっているから「放送局なんじゃ!」と思いがちですが、トラの皮を除けば
マーケット上では放送も通信も、所詮同じ。顧客は少なくとも そう思っている。
で、この役をインターネットに取られたら、やはりかつての鉄道王と同じ運命をたどるのですよ。

うーむ。うーむ。

 

 

 


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コメント

  1. TBありがとうございました。実際のところ、東阪などのエンジニア以外は、「??」って感じだと思いますけどね。

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